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小豆を食べて世界を救う夢を共有しよう! | Azuki - Red beans webmagazine

小豆と和菓子が主役のライフスタイルマガジン

小豆を食べて世界を救う夢を共有しよう!

小豆を食べて世界を救う夢を共有しよう!

世界を救うひとになりたい、そんな熱い思いに中学や高校生のときにかられたこと、あなたもありませんか。
わたしも、高校生の頃、世界の困っている人の役にたつ生き方をしたいと、進路選択のとき、そんな想いを抱いていたことがありました。

でも、その夢を忘れてもう十数年。

ところが、「世界の食糧事情を、小豆がすくう」可能性があることを、いま、生涯をかけて追求しておられる遺伝子研究者さんがおられることを知り、忘れていた昔のアツーイ気持ちを思い出しました。
「小豆」と「世界」と「食糧事情」が組み合わさり、未来を語れるのは、何があるからなのか?

というわけで、世界の食糧問題を小豆で救う夢にむかって研究されている内藤健さんに、お話しをうかがってきました。

<世界の食糧事情>

世界の人口は、開発途上国を中心に増加を続けており、2008年には68億人となりました。
今後アフリカを中心とした開発途上国で人口の増加が続くことから、世界の人口は、2050年にはさらに1.3倍の91億人に達すると見込まれています。

そんななか、バイオ燃料向け穀物の増加、収穫面積や単位収穫量の減少、世界的な異常気象の発生などが原因で、世界の、特に アジア・環太平洋、サハラ以南のアフリカの国々を中心に栄養不足人口の増加、食料危機が、世界的課題として指摘されています。

(参考)農林水産省ホームページより
http://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/h21_h/trend/part1/chap1/c1_01.html

輸入食物を買えるうえ、気候もめぐまれた温帯にある日本にいると、世界で食べ物が足りないということに想いをはせるときは少ないかもしれません。

ですが、健康から、食べ物のことへ、そして生産のことへ、文化のこと、環境のことへと視線をうつしてみると、土壌のこと、耕作地の減少という事実からは逃れられないと、わたしも知るようになりました。

特に、耕作地が、塩害のため減っていることを本で知り、いてもたってもいられないけれど、わたしにはどうしようもないと、暗い気持ちになってもいました。

(参考図書)
『文明崩壊 上: 滅亡と存続の命運を分けるもの』
ジャレド ダイアモンド 著
https://amzn.to/2wpf83h

『土の文明史 』
デイビッド・モントゴメリー著
https://amzn.to/2wz8APO

 

<内藤健さんのご紹介>

内藤健さん。ジーンバンク内の展示コーナーで。
内藤健さん。ジーンバンク内の展示コーナーで。

そんな、食料危機という世界規模の課題に対して、高校生のときから、解

決をめざして人生をあゆんでこられているのが、内藤健さんです。

国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(通称 農研機構) 遺伝資源センターで、「小豆の仲間、Vigna属(ささげ属)が世界の食糧問題をすくってくれる鍵になる」と信じて、日々研究されてます。

Vigna属は、多様性があるのが特徴だそうです。
耐塩性をもつもの、耐乾性をもつものなど、まったく異なる環境に適応していきのびている系統が、同じ属のなかにこれほどあるのは、すごい!
と、多様性と、その可能性に、Vignaに出会ったとき、内藤さんは震えたそうです。

多様性があるとなにがいいのかというと、生き残るチャンスがふえるから。

小豆も含まれる、ささげ属の豆の仲間たちが、世界の食糧事情を救うミッションにつながる道をお聞きする前に、まず、Vignaのことを先に質問しました。

小豆の仲間たちは、どんな多様性をもって、これまで生きてきて、今後、地球を救うまでの道を示してくれるのでしょうか。

<小豆はVigna属>

小豆は、ささげとともに、Vigna属(ささげ属)のなかにあります。

vegna属の分類を、筆者が、書いてみました。
vegna属の仲間たち

小豆と、ささげは、仲間なんですね。

日本で、ささげというと、小豆とみかけが似ています。
ですが、ささげ属の他の豆、たとえば、カウピー(英語表記 cowpea. 他black eyed peaともよばれる)や、もやしでおなじみの緑豆、ケツルアズキは、小豆とはみかけがちがいます。

Black eyed pea = Cowpea. ほんとに黒い目があるようにみえますね。
Black eyed pea = Cowpea. ほんとに黒い目があるようにみえますね。

Vigna属は、いま確認されているだけで、世界に104種類あります。

 

<Vigna属のルーツ>

Vigna属の豆は、アフリカが原産です。
生息範囲もアフリカから、ユーラシア大陸の西から東、そして日本と幅広い豆です。

小豆は、中国が原産か、日本固有のものかという説にまつわる話しは、あずきの系統のなかでだけでの話しになります。

遺伝学的にたどって、Vigna属全体でみると、小豆の仲間は世界にひろがっていることがわかります。

 

<野生種のアズキたちが生き残ってきたところ>

小豆や緑豆、カウピーなど、栽培されているVignaがある一方で、過酷な環境のなかでも生きる野生のVignaが、沢山あります。

もともとVigna属は、西アフリカで生まれた豆と考えられています。
それが、いま、多くの野生Vignaが、熱帯から亜熱帯、そして温帯にかけて、世界でひろく分布しています。

野生Vignaが生息しているのは、たとえば、砂浜海岸や、石灰岩地帯、砂漠など。
一般の農作物が栽培できない、厳しい環境に適したものが、多数存在しています。

 

海辺で群生している野生Vignaの様子が展示されたポスター
海辺で群生している野生Vignaの様子が展示されたポスター

<厳しい環境に育つようになったわけ>

わたしは、疑問をここで内藤さんにぶつけてみました。

「どうして厳しい環境にも耐えられるぐらいに、Vignaは『生命力が強くなった』のか」と。

すると内藤さんは、「それは生命力が強いのとは違う」と、進化について丁寧におしえてくださりました。

生命力が強いから厳しい環境で生き残ったのではなく、厳しい環境のなかでたまたま生き残れる特徴をもっていたものが、いま残っているだけだと。

海辺の野生小豆も、同じで、海辺に種がおちた植物がたくさんあるなかで、塩分に強くなる特徴をたまたまもっていた。
Vignaが強いから、過酷な環境で生き残った、というわけではない。

野生小豆のことを、こんな風にも内藤さんは、表現してくださりました。

「実は、案外弱い存在だったのかも知れません。だから、光も水も豊富に得られる、植物が育ちやすい場所は他の植物が占領していて、小豆の仲間は条件の悪い場所に追いやられてしまっただけかも知れません。追いやられた場所で生き延びられる植物はほとんどいなかったと思いますが、中にはその場所で生き延びられるような突然変異をもったものがいたのでしょう。弱い存在だったからこそ、厳しい環境に適応したものしか生き残れなかったんです」と。

しかし、現段階では、なぜそうなったのかは、まだわからないのだそうです。

「Vigna属栽培種(アズキ) 環境耐性は低い」、と書いてある展示
「Vigna属栽培種(アズキ) 環境耐性は低い」、と書いてあります

 

<小豆の野生種の色と味>

野生小豆は色が黒くて、小さいです。

野生小豆と、大納言小豆の、粒の大きさの違いがひとめでわかる展示。左側は、小豆の直接の祖先です。これを古代人が栽培しているうちに、いまの小豆へと変化してきました。
野生小豆と、大納言小豆の、粒の大きさの違いがひとめでわかる展示。左側は、小豆の直接の祖先です。これを古代人が栽培しているうちに、いまの小豆へと変化してきました。

 

もともと黒くて小さな小豆が、栽培種になると赤くなるのは、東アジアや日本で赤くて大きな豆が好まれ、選抜されてきた長年の結果です。

色は、黒いほうが、鳥や動物にみつけられにくく、野生種にとっては生き延びる利点につながります。

また、黒い色素は、コーティングにもなるので、種子を長持ちさせる効果もあります。
栽培種の赤い小豆は乾燥させて冷蔵庫で保存しておかないと1年ももちませんが、野生の種子は風雨にさらされても何年も生存できます。

また、赤よりも、黒のほうが、ポリフェノールなどの抗酸化成分も、より豊富に含まれていることになります。

内藤さんは、いろいろな野生小豆を煮て、あんこにして食べ比べたとき、いまの栽培された小豆のあんこよりも、風味がつよくておいしかったと、味の感想を語ってくださりました。

ポリフェノールなどの色とつながる成分は、風味につながります。

色が黒から赤に選抜されてきた過程で、栽培される小豆は、より風味やクセを落とす方向にきたともいえるようです。

栽培種アズキのコレクション展示
栽培種アズキのコレクション展示

 

<Vignaの特性が地球を救うことに、どうつながるか>

さて、ここまで、Vigna属のなかの、ささげや小豆のこと、野生種と栽培種のことをみてきました。

土地の塩害などで耕作地がだんだんなくなってきていること、そして食糧危機がくるという地球規模の課題。
これらを解決することと、Vignaの特徴である多様性とは、どう関わってくるのか。

鍵は、耐塩性をもつVignaにあるのだそうです。

多様性があることが、他の植物より、研究に有利なのは、耐塩性のあるVignaと、耐塩性のないVignaの、両方をくらべることができるからです。
比較がしやすいため、耐塩性に強い原因遺伝子を特定しやすくなるのだそうです。

また、耐塩性があるVignaのなかでも、さらに、塩分を貯めるやつ、吐くやつ、濾すやつ、といった多様性があります。
いまは、耐塩性のあるVignaたちがみつかっているといっても、海水で生きて行けるVignaはまだみつかっていません。

ただ、塩に対応するさまざまな特性の原因遺伝子を特定し、組み合わせることができれば、今後、海水だけで育つ種を新たにつくりだすことができます。

内藤さんの夢では、海水で育つ作物を育てることができれば、土地の塩害の問題も解決する、という道筋を描いておられます。

また、海水で育つ遺伝子をVignaで特定できたら、その遺伝子を大豆に埋め込んで、大豆をたくさんつくることで、食料問題の解決につなげたい、ということもおききしました。

 

<小豆を食べて世界の食糧事情を救う夢を共有しよう>

アズキコレクション展示の前でお話しくださる、内藤健さん
アズキコレクション展示の前でお話しくださる、内藤健さん

海水でも育つ遺伝子組み合わせの発見を、5年以内に終わらせたいと、熱く内藤さんは語ってくださりました。

いま、海水を吐く遺伝子がVignaから特定されるのは、ほんのもうあと少しのところまで来ているそうです。
取材させていただいたのが、2018年4月でした。
もしかすると、早ければ、来年には、大きくニュースでこのことが取り上げられているかもしれませんね。
そうおもうと、わたしは、発見前にこの大ニュースを先にお聞きできたことが嬉しく、ワクワクしました。

小豆が世界を救うといってしまっても、間違いではない、大掛かりなプロジェクトです。

最終的には、Vignaの遺伝子が他の作物栽培につかわれるので、小豆がたくさん作られるわけではないけど、きっとそのときは、小豆の特性を生かしたんだよということを、だれもが知っている未来の生活を、わたしは想像しました。

世界の食料危機解決の道を、Vignaが背負っています。

小豆をたべるたびに、内藤さんのこの研究を、おもいだし、語ってしまいそうです。
みなさんも、和菓子や小豆をたべるとき、内藤さんの夢と研究を共有し、明るい未来が小豆からうまれるんだよと、心のなかで応援しませんか。

内藤さん、小豆をとおしてVignaへ、そして世界へ、そして未来へ、明るい気持ちにつながるお話しを、ありがとうございました。

研究成果発表を楽しみにおまちしています。

執筆 和田美香

撮影  野島芳美

 

<内藤健さんプロフィール>

内藤 健 さん

国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 遺伝資源センター 多様性活用研究ユニット研究員
高校生のとき、バイオテクノロジーが世界の食糧問題を救えると知ったことが、人生を決める。
京都大学で農学博士となった後、アメリカ ジョージア大学で研究、そして帰国。
かつて緑の革命を起こしたノーマン・ボーローグや、その弟子で、国際的なジーンバンク事業を推進したベント・スコウマンといった偉大な先人たちが、世界を飢えから救おうとしたその夢を共有する、熱血研究者。

 

<国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(通称 農研機構) 遺伝資源センター紹介>

生物遺伝資源を、国内外から収集・受け入れし、増殖・保存したうえで、来歴や特性情報を整備し、食料・農業分野の研究開発のために広く提供する農業生物資源ジーンバンク事業を実施。

 

<遺伝資源センター 多様性活用研究ユニット紹介>

農業生物資源ジーンバンク事業における、植物遺伝資源の研究部門。進化や栽培家によって生み出された植物の多様性を研究対象とし、多様な遺伝資源を収集・保全するとともに、その多様性をもたらしている遺伝子を解明し、育種に活用できる知識を得ることを目標にしている。
現在の研究対象は、栽培イネと野生イネ、栽培ソルガム、栽培ダイズと野生ダイズ、栽培アズキ・リョクトウ類と野生アズキ・リョクトウ類。

 

<ジーンバンク紹介>

ジーンバンク
ジーンバンク

 

国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(通称 農研機構) 遺伝資源センターが、生物遺伝資源を保存・管理・配布する施設。
地球温温暖化等のさまざまな課題に対し、「強み」のある農作物を生みだすためには、多様性に富んだ遺伝資源の活用が必要不可欠です。
そのため、植物・動物・微生物・DNAの遺伝資源を収集・保存。現在、約22満点の遺伝資源を保有。
世界で5番目の保存点数。
ちなにみ、保有されている植物遺伝資源約22万点のうち、アズキは1,551点。
(数字は、2013年度のもの)。

 

<参考書籍>

『文明崩壊 上: 滅亡と存続の命運を分けるもの』
ジャレド ダイアモンド 著
https://amzn.to/2wpf83h

『土の文明史 』
デイビッド・モントゴメリー著
https://amzn.to/2wz8APO

ABOUT THE AUTHOR

Azuki編集部編集長和田 美香
むくみやだるさで仕事も子育ても苦しかったとき、小豆玄米ごはんや、オリジナルの小豆シリアルを毎日食べることで、調子をとりもどす経験をする。もともと美容業界で働いていており、内面から輝く美容には、毎日の食も大切と実感していたことから、小豆のよさを世界の女性に伝える大使としてAzuki.tokyoの活動を始める。
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