約30年前、和菓子業界に新たな歴史が誕生しました。
すでに和菓子を食べ歩いていた私は、この衝撃を今でもよく覚えています。
いちごが丸ごと入った大福の発売です。
「大福にフルーツ?いやいや、邪道だわ・・・」とは当時の私の声。
一時的な話題狙いだろうと思いきや、いちご大福は瞬く間に全国的ブームを巻き起こし、今も人気が衰えることのない大ヒット商品となりました。
今では多くの和菓子店で見かけるいちご大福ですが、
あんと生の果物の組み合わせが苦手な私が、初めて「また食べたい」と思えたのは、
最初に考案し販売したと言われる創業1912年の大角玉屋(おおすみたまや)のものでした。
正確には『いちご“豆”大福』。
「何かのきっかけで和菓子の時代が来るだろう」
という新聞のコラムを読んだ大角玉屋三代目 大角和平氏が、1985年、いちごが乗ったショートケーキをヒントに発案・販売したのだそうです。
特許も取得されています。
仕事帰りに銀座店を訪れましたが、お目当てのいちご豆大福はつぶあんもこしあんも完売。
保存料を一切使用しておらず作りたてを当日中に売り切るため、夕方には購入できないことも少なくありません。
電話予約で取り置いていただくのが確実です。
小豆は北海道十勝産、赤えんどう豆は富良野産、もち米は宮城産みやこがね、いちごも国産。
季節限定商品とする店が多い中、大角玉屋では年間を通して販売しています。
軟らかく、持った指の形に餅がへこんでしまいます。
小豆といちごの鮮やかな色味からも、厳選された材料であることがわかります。
口に運ぶと、まずいちごの香りと風味がいっぱいに広がりますが、甘さ控えめのあんが、それに消されることなくちょうどよく混ざり合ってきます。
「また食べたい」と思えたのはこのバランス。
いちご大福は大福です。
いちごが主張しすぎて本来の大福の旨味を封じ込めてしまったら、それはもう大福ではない。
大福といちごは別々にいただきたい、とこのブームに乗り遅れた私ですが、
大角玉屋のものは甘いあんと甘酸っぱいいちごがどちらも活きたまま味わえ、いちごをわざわざ入れた豆大福として成り立っています。
それもそのはず。あんはいちごの風味に負けないように渋抜きを加減し、いちごはあんと相性のよい品種を厳選しているとのこと。
相手の個性に合わせ、少しずつ歩み寄せて生まれたものなのですね。
今回訪れた銀座店では、店舗限定・期間限定・販売個数限定の『銀座特選 いちご豆大福』(つぶあんのみ)を販売しています。
小豆は京都丹波大納言、餅は幻の滋賀県産「羽二重もち米」、いちごは旬の最高級のもの(今回は「あまおう」とのこと)、そして水は三国連峰の名水「吟水」という、最高級原材料を使用して作られているそうです。
大きさは前出のいちご豆大福と変わりません。
上生菓子のような上品な舌触りで、かぶりつくより黒文字でいただきたい感じです。
あなたはどちらがお好みでしょうか。
【和菓子処 大角玉屋本店】
住 所:〒162-0065 東京都新宿区住吉町8-25
電話番号:03-3351-7735
【銀座店】
住 所:〒104-0061 東京都中央区銀座西3-1 銀座INZ1
電話番号:03-3563-1535
【四谷店】
住 所:〒160-0004 東京都新宿区四谷3-6
電話番号:03-3358-8612
U R L :http://www.oosumi-tamaya.co.jp/
執 筆 者:加藤三和子