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和菓子の原材料は生産地とともにある未来~白小豆を自社生産される 株式会社 虎屋

和菓子の原材料は生産地とともにある未来~白小豆を自社生産される 株式会社 虎屋

白小豆に、和菓子と農業は試されている。

そう感じずにはいられない白小豆を取り巻く難しい現状を、自社で白小豆を契約生産されている和菓子の老舗虎屋様でお話を伺ってきました。

まず、白小豆とは、和菓子の白あんなどに使われ、生産量が限られている希少原材料です。
虎屋では、生菓子や白あんのお汁粉には100%の原材料として、また手亡豆や福白金時と合わせて羊羹にも使われます。

虎屋様では昭和の初めころから白小豆の契約栽培を始め、原材料の品質保持と確保をしてこられ、2018年2月には、独自の品種「福とら白」として品種登録をされたそうです。しかし現在は作付面積を維持することにとどまっておられるのです。
それはなぜなのでしょう?

 

お話を伺ったのは、資材部 部長の 星野太郎さんです。

 

白小豆を取り巻く作付面積が伸びない理由はおもに3つあります。

1つめの理由は、後継者の不足です。

虎屋様の契約農家でも15年前は500人おられた生産者様が今は200人になってしまいました。単純に一人あたり約2.5倍の作付面積となってしまっています。

日本の農業自体がそのようなペースで農業従事者が減ってきているということで、日本の農業の縮図でもあるのですが、虎屋様の契約生産農家さんとの間でも起きています。

後継者の方も小さい作付面積のなかでいかに効率よく収益をあげていくかという経営者としての視点の上では、白小豆が敬遠されてしまいます。

2つめは重労働があげられます。

虎屋が契約栽培を委託している白小豆「福とら白」の収穫はほぼ100%手刈りだそうです。

白小豆の茎や枝は、まっすぐに伸びず、地面に寝て成長するため、機械が畑に入りにくいのです。

また、少ない収益に対して機械を導入することも難しいのです。

また、行政としても小豆は、米麦大豆といった主要穀物ではなく、嗜好品としてみなされているために、機械等を買うための補助金も全国的には出ていません。

ただ、群馬県に限っていえば、一部補助事業で対象品目となったので補助金が出るようになりました。

 

虎屋様としては、この制度を近隣の生産者様にいかに広めて、活用していくかが課題であるとのことでした。

ただ虎屋様としては、品質の良い原材料確保のために、生産者様の 高齢化も進む中、選別も手作業で行っていただいていたところを色彩選別機を貸し出して、少しでも負担を軽減しようとしておられたり、社員の方が直接産地へ出向いて農作業をしたりという生産地の収量を維持することに心を砕いておられます。

3つめは気候変動。現在の激しい気温変化、旱魃と大雨・長雨といった極端な天候に現行品種が対応しきれていない現状があります。
白小豆の「福とら白」は虎屋様の独自品種です。
1927年(昭和2年)に先々代の黒川武雄当主は、群馬の利根沼田地区での白小豆の契約栽培を始められました。

当初奈良県の山中で植えられていた備中系と思われる白小豆の種子を群馬に持ち込み栽培を始めたとのことですが、10数年前の遺伝子調査で備中のものとは違う品種ということが判明しました。約80年も元の産地と離れた場所で栽培を繰り返していくなかで、独自の品種に変異していった可能性が高いのですが、元々の出所である奈良の山中には同じ白小豆は現存していないため、現在では確かめようがないとのことです。
いずれにせよ備中の遺伝子とは異なることがわかり、系統選抜を施し独自の品種として守っていくことにされたのです。

昨年2018年2月9日「福とら白」の品種登録がなされました。民間での小豆の品種登録は初だそうです。今後の白小豆の開発については、収穫を楽にできる、からみにくい茎であったり、北限にも耐えられる生育特性を持つものに変えていく必要があるとされているのですが、しかしやはり味と色が命なので、いかに品種の色と味を変えずに、生育の姿を変えるかが課題です。

自治体で取り組んでおられるような品種改良を、民間会社一社でされていることに驚きます。

2016年から始まったこの品種改良は農業博士の方と組んで、求める品質・開発コンセプトを共有して、受粉作業等から深くかかわって行っておられます。

ただ、まだまだ品種改良は10年以上かかる気の長い作業ですが、白小豆の収穫量を増やすためには、品種改良が欠かせません。

白小豆の収量の拡大は、

生産者様と農地の増加

重労働の軽減

収量を増大させる品種改良

が必要になります。

虎屋様は遠隔地にある生産地とも電話一本で繋がっている間柄ではなく、農作業や品種改良まで協働されていて白小豆を未来に残す取り組みを続けておられるとのことでした。

白小豆という貴重な財産を守るために、和菓子製造販売である虎屋様・生産地・品種の改良される方が
共に虎屋の和菓子を作っているという共同体の気持ちで創り上げておられることに、日本の農業へも一つの未来を示唆しているのではないかと感じました。

 

執筆 岡田尚子

 

取材日 2019/2/14

 

株式会社虎屋

とらやは室町時代後期の京都で創業。五世紀にわたり和菓子屋を営む。

後陽成天皇の御在位中(1586〜1611)より、御所の御用を勤める。

明治2年(1869)東京遷都にともない、天皇にお供して、京都の店はそのままに東京にも進出、現在に至る。

https://www.toraya-group.co.jp/

 

 

ABOUT THE AUTHOR

岡田尚子
美と食のライター・料理人
おいしい!という笑顔のために、味だけでなく、
料理の演出も含めた提案が得意。
味覚が繊細な方向け定番レシピだけでなく、組み合わせにこだわらない
アレンジレシピへのチャレンジが好き。
和菓子は美につながる食として注目している。
料理人魂からおいしい和菓子店に出会うとまねて作りたくなり、また広めたくなる性分。
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