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世界一の小豆をつくり届けます

世界一の小豆をつくり届けます

北海道、十勝の森田農場さんのほ場で育てられた、小豆は、優しく、まあるい味がします。
もっとお料理や菓子を作りたい、もっと工夫して美味しく食べたい、子供にも食べさせたいと、どんどん美味しさの世界をひろげてくれる小豆です。

森田農場さんの小豆には、熱い想いがこもっています。
もっとおいしい小豆を届けたい職人さんや料理人さん、料理研究家さんに、小豆を育てている森田さんご夫妻の熱い想いをお伝えしたいとおもい、お話しをうかがってきました。

 

1 森田農場さんの紹介

 

森田農場さんは、北海道十勝清水町羽帯(はおび)にある72ha(東京ドーム約15個分の広さ)もの畑を、森田哲也さんと、パートナーの森田里絵さん、そして正社員の中村祐太さんを中心に、多くのお手伝いの方と力をあわせて運営されています。

100年前の明治中期に、初代が入植されてから、森田哲也さんは4代目。
2004年にUターン帰農されて以降、2011年に法人化され「株式会社A-netファーム」を設立、2011年にはJGAP認証、2015年には小豆で世界初のGLOBAL GAP認証の取得をとおし、永続化する農業と、美味しさと安全性のバランスがとれる農業を目指し取り組んでおられます。

 

2 農業が嫌でとびだしたのに戻ってきたわけ

 

森田哲也さんは、3代目のお父様を手伝い、小さい頃から農業・酪農をみて育ちました。
でも、多忙な家族経営や、天候に左右され価格の不安定な農業とは決別したいと、高校生のときに、農家をつがないと決めて進路を選ばれました。
なのに、35歳のとき、北海道庁を辞めて、農業経営の道に。

なぜ、とおききしてみました。

すると、北海道庁に勤め、農家支援の仕事をしながら、結局ずっと自分は、人生のテーマとして、自立した農業経営に何ができるかを考えてきていることに気づかされたからだ、と。

20代は、自立した農業経営のためにどんな支援ができるかを、現場担当として農家さんと近いところで働き、それなりにやりがいもあった。
なのに、歳を経て、お役人としての仕事の部分も増えてくると、現場との距離も離れてしまい、この仕事が直接農家の役にたつのかと、だんだん不安になってきた、そうです。

嫌で飛び出したはずなのに、農業を外からの視線で、こうやったらいいのでは、ああやったらいいのではと考えている。
この想いを、ただ想いだけで終わらせないためには、自分の手で模索しながら考えるのがいいのでは。

模索しながら農業に対する想いを実現してゆくことが、自分の生い立ちと、そして途中で道をあきらめた経歴をもつ、自分なりのやり方にならないか。

森田哲也さんは、その頃、まだ道庁に一緒に勤めていたパートナーの森田里絵さんと、このことを話しました。
里絵さんとは、共感だけでなく、新しい可能性を一緒に模索する覚悟も共有でき、共にやってみようと決めたのだそうです。

3 外からみた農家の可能性

 

哲也さんと里絵さんは、帰農ではなく、起業の覚悟で、札幌から十勝清水へ拠点を移されました。

農業を単なる食品原料の生産ではなく、魅力とやりがいがあるビジネスにしていこうという想いがこもっていたのです。
始める時、工夫のポイントを、生産者自らの商品づくりと、直接販売に置かれました。

なぜその2つが、可能性をひろげるためのポイントだったのでしょうか。

それは、北海道が、穀物など、主に食品の原料が生産されている地域だからでした。

本州や都市近郊の、野菜農家や果実農家とちがって、北海道の畑作農家は、消費者と出会うことがほぼありません。
農家が小麦を作っているとはいえ、小麦のもみ殻がついているままでは、消費者は口にできないため、収穫してから食べてもらうまでの途中で脱穀し製粉する仕事も必要になります。

小豆を作っているとはいっても、さまざまな選別の行程を経なくては、消費者の手にとどけられる品質のものになりません。

なので、一般的に、北海道でつくられる生産物は、1次、2次の集荷団体、そしてメーカーと、長い流通の助けがないと販売できないと考えられています。

とはいえ、子供を育てるように愛情を込めて大きくした作物を、嫁にだしたらもう後は知らないと言ってしまうばかりでは、なんとも寂しく、そして喜びが少ないままではないか。
そう森田さんは考えました。

せっかくITもすすみ、物流も進化し、価値観もかわってきている世界に生きているのだから、自分たち農家の育てた子供たちが、ほんの一部でも、お客様に直接おいしいと言っていただけることを、幸せとして受け取っていいのでは。少しでもいいので、直接お客様の声を受け取ることで、またもっと美味しいものを、喜んでもらえるものを作ろうと、自分たち農家もスパイラルアップしてゆく原動力にしてゆける。

そんな、誰もが喜びを直接感じられる環境づくりが可能になったらいいな。

哲也さん里絵さんは、そう考え、それを実現することで、ビジネスとしての農業の可能性をひろげる突破口にしようと考えられたのでした。

2016年pariでの小豆のアトリエ会場準備の様子

4 20年のハンディを埋めるために

 

手ごたえがあると信じながらも、夫婦二人ともに道庁を辞め、安定生活への退路を断って始める農業でした。
だから、同い年で、すでに農家を継いでいる友人と比べても、20年もの技術のハンディがある。
普通にやっていては、追いつける差ではない。
「継ぐよ」といったとき、お父様に大反対された。

そんななか、ブランクがありながらも迎えてくれた地元の仲間や、送り出してくれた昔の職場の仲間にも報いる仕事として農業をつづけてゆくには、理念や想いをきちんと言葉にしておかなくてはと思ったそうです。

どんな農業をしてゆきたいか、最初にきちんと言葉でかたちにしておくことで、続けてゆくうちに自分がブレるかもしれないという危機感ともちゃんと向き合ってゆこうとされたのでした。

それが、「美味しい世界一の十勝小豆をつくり広める」という旗を立てることでした。

このビジョンは、農業を新しい仕事に選びスタートされた2004年からずっと掲げられてきたのでした。

 

5 どうして小豆を象徴にしたのか

 

美味しい世界一の十勝小豆をつくり広めることを旗としてかかげたのは、広く世界に向かって小豆を語れる農家になる姿を実現させることで、日本の農業がもつ多様な可能性や、日本の農業の質の高さを伝える象徴にしようと考えられたからです。

そう思われたのには、小豆が、2つの外的環境のポテンシャルをもっていたからでした。

ひとつは、小豆が、日本の食の伝統を語るものとして必須であること。
もうひとつは、十勝を拠点とする森田農場さんの土壌は、全国的なブランドである「十勝小豆」の生産に極めて適する気候帯にあるため、情報発信に優位であること。

この2つの強みに、新しい挑戦を融合させることで、ブラッシュアップさせてゆける。
そう森田哲也さんは語ってくださいました。

6 目指すのは、作り手と食べ手の選択の自由

 

農業のもつ多様な可能性が花開くと、消費者はどんなメリットを得られるのでしょうか。
この点についても、お考えを教えていただきました。

たとえば、コーヒーや紅茶、ワイン、チーズは、好みの地域や農園のものを選択できることで、より豊な気持ちになれるようなれますよね、と、例をあげていただきました。
そんな世界を、小豆でもつくること。
産地や農家単位で、おいしいワインやチーズを探すような楽しみを、小豆でも届けられる世界をつくりたい。

小豆の産地や農家を選べる楽しみや、いろんなシーンによって小豆の味を選択する楽しみが増えると、笑顔になれる人もきっと増える。
食べるひとが豊かになる選択肢を、料理人さんや菓子職人さんを通じて、消費者に喜んでもらえたら嬉しい。
小豆の選択肢がひろがることで消費者の評価があがり、料理人さんや菓子職人さんも、そして小豆を生産する農家仲間も、それで儲かったよといいあえる世界をつくりたい。

そう考えて、森田農場さんでは、森田農場の畑でつくった生産物だけを、販売する活動をしておられます。

直販のお取引先である、職人さんや料理人の方から、評価いただける声も届くようになりました。
どんな声かというと、たとえば、煮え方が一定で、失敗がない。
しかも、早く煮えるため、時間短縮や仕事の効率化が図れる。
香りや味が濃い。
などなど。

そんな声を消費者からも直接いただけたら、生産者としての自分たちも、美味しいものを届けていると自負ができる。
さらに、もっと美味しいものをつくる仕事への責任も高まるし、熱も一層はいる。

自社農場だけの商品づくりと直接販売は、「ニッチなものも選べる」という、新しい価値を加える提案をしているだけと、強く強調しておられました。

このお話しをおききしたとき、紅茶やワインが好きな筆者は納得しました。
とことんおいしい小豆を追及したい人に納得いただける小豆づくりを、森田農場さんは目指されているのですね。

7 美味しい世界一の十勝小豆を育てるための工夫

 

お客様に直接小豆をとどけ、お客様の声をききながら育てることをめざしておられるため、収穫の量を追求するのではなく、味がいい、品質がいいものを届ける育て方にこだわっておられます。

おいしい小豆を育てるための工夫を、3つ教えていただきました。

一つ目の工夫は、土作り。
土のミネラルをととのえる資材、堆肥を入れる。
土壌分析をして、足りないものだけを、適正にいれてゆく。

たとえば、足りないミネラルだけを適切にいれるということは、窒素を過剰にいれないようにすることにもつながります。
窒素を沢山いれると、葉がしげり、小豆の収穫量も追及できるのだそうです。
でも、森田農場さんでは、質を追求するバランス調整をされています。

二つ目の工夫は、一本の幹をしっかり育てる栽培。
小豆の株間もすこし広めにとり、単位当たりの収穫量より、栽培密度を適切にとって1本ずつ元気に育つようにしておられます。

三つ目の工夫は、丁寧に育てる努力。
たとえば、草取りも、薬だけに頼らず、除草機や人力でもされています。
人手をかけることで、今年の苗と収穫物を守るだけでなく、次の年に雑草のタネをのこさない、次の年の土を守り、より健康な子を育てる循環をつくることにもつながるそうです。

作物が、健康な子に育つ手助けをする。
実が大きくなるようにだけではなく、おいしさを追求して適切な期間で収穫もする。

森田農場さんで販売されている小豆が、皮がやわらかく、失敗なしで優しいおいしさを感じられる餡になるのは、こんな手間と工夫があるからなんですね。

 

8 チャレンジしながら残していきたいもの

 

哲也さん里絵さんが引き継がれた森田農場は、約100年をむかえられています。
インタビューの最後に、これからもチャレンジしつづけるなかで、守っていきたいものを2つお聞きしました。

守りたいものの一つ目は、土。
おいしいといっていただける小豆や大豆、小麦、じゃがいも、アスパラガスなどをつくることができるのは、先代もふくめてずっと土をつくってきてくれたから。
だから、これからもさらに100年、そしてもっとおいしいものを作り続けることができるように土は大切にしてゆきたいとお話しいただきました。

守りたいものの二つ目は、毎日の食生活のなかの小豆をつかった伝統や文化。
森田哲也さんの想い出のなかでも、小豆はハレの日に食べるものだったそうです。
お母さまが、農作業を休んでいいときに草餅をつくってくれたことや、お客様をもてなすときやハレの日にお萩やぼたもちを食べた記憶が残っているとのこと。
小豆は、嬉さと、楽しさ、喜びとがいっぺんにつまっている食べ物なんですね。

そして、小豆は日本の財産だともおっしゃります。
小豆の在来種は、日本古来のDNAを持つという説も最近では定着してきているからです。

土と伝統を守り、DNAも受け継ぐなかで生きていることを自覚していきたいと、語っていただきました。

森田里絵さんと、抜いたじゃが芋の芽(のらいも)

9 森田さんご夫妻の魅力

哲也さん、里絵さんは、お二人が同じビジョンに向かって力を出し合っておられます。
そのため、お話しすると、とっても前向きで明るい気持ちになれます。
また、作物を、「大事な子供を育てている」といつもおっしゃるお姿がほんとにそのまま表れている方々です。

もし、あなたが、小豆でもっとお客様に喜んでいただきたいと試行錯誤されている食のプロや、食にこだわりのあるかたなら、小豆のことを、森田さんご夫妻にご相談されることを強くお勧めしたいです。

小豆をとおして、笑顔が増える生活や、心の豊かな生活が広がることを目指している、あなたとの出会いを、待っておられます。

 

<追記>
2018年の第2回小豆のアトリエin Paris で得られた手ごたえ

料理に仕事として関わる方が、集ってくださったそうです。
ホテルのレストランの総料理長のかたや、料理研究家さん、パティシェなど、ご自身のビジネスにつながるポイントを持ち帰ろうと、みなさんとても熱心に質問いただき、試食も楽しんでいただけたこのこと。
あんこや小豆の可能性は、もしかしたら、「小豆はあんこで食べる」と信じているわたしたち日本人よりも、もっと自由な発想でおいしいものとして取り入れてくれる彼らから発信されるかもしれないと森田さんが感じるほど、会場は熱気につつまれたそうです。
関連記事  URL

http://www.azuki.tokyo/ 2373.html
http://www.azuki.tokyo/post-2956/

<参考>
2017年1月の、第1回小豆のアトリエ in Parisの様子も記事にさせていただきました。
記事URL
1 http://www.azuki.tokyo/post-636/
2 http://www.azuki.tokyo/post-639/
3 http://www.azuki.tokyo/post-645/

執筆 和田美香

<取材協力>
㈱A-Netファーム十勝 森 田 農 場
http://www.azukilife.com 
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ABOUT THE AUTHOR

Azuki編集部編集長和田 美香
むくみやだるさで仕事も子育ても苦しかったとき、小豆玄米ごはんや、オリジナルの小豆シリアルを毎日食べることで、調子をとりもどす経験をする。もともと美容業界で働いていており、内面から輝く美容には、毎日の食も大切と実感していたことから、小豆のよさを世界の女性に伝える大使としてAzuki.tokyoの活動を始める。
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